小説

映画宝島を観た後に小説の宝島を読んだ・感想や映画の補足など

映画宝島の原作である小説の宝島を読み終えた!

すごかったーー
とんでもない小説だった!
なんだこの力強さは・・
「エネルギーみなぎる超傑作!」って感じかな

ってことで今回は映画からの小説宝島を読んで感じたことを書いていきます!
ネタバレ多少あるのでお気をつけください

宝島の原作小説情報

小説の宝島は2018年6月に講談社より出版
文庫版は2021年に上下の2冊に分け刊行されています

第一部「リュウキュウの青」(1952-1954)
第二部「悪霊の踊るシマ」(1958-1963)
第三部「センカアギヤーの帰還」(1965-1972)

の三部作からなり、部ごと年代別に沖縄アメリカ統治下時代である計20年間が描かれます

史実を基盤に戦争孤児たちを中心とした青春群像劇はミステリー要素も秀逸と高く評価され、第9回山田風太郎賞・第160回直木三十五賞・第5回沖縄書店大賞小説部門を受賞しています

原作小説の宝島
映画で感じたことの答え合わせと思って読んだけど・・

映画を先に観ているので話は知っているし「映画を観た時の私の解釈で合ってたかな」と答え合わせのつもりで読みはじめたんです
映画だけでは理解が追いつかなかった部分を穴埋めするような感じもありつつね

でも小説を読み始めてすぐわかった
同じ話だけど映画と小説はだいぶ印象が違うなと

これはそれぞれで感じたことはそのまま、無理に合わせなくていいんだろなって思った
映画では細かい変更点も多々あり(実写となるといろいろ事情もあるでしょうね)そりゃ感じ方変わって当たり前だな、と


小説は語り部(ユンタ―)がお話をしてくれるような物語形式
映画は進行形のドラマ形式、グスクによるモノローグは少しだけ入るけど基本は会話と映像で伝えていく感じだね

雰囲気もけっこう違う
小説は軽快ですね
語り部がユーモア溢れる方のようでw
()書きで状況説明してくれたり登場人物にツッコミを入れたり、さらには合いの手みたいなのが入ったり・・ノリよく語ってくれるんです(カフー!)←こんな感じで
ただ内容は重い部分はたくさんあるのでつられてこちらも軽く読み進めるとどーんと・・奈落の底かというところまで落ちますけどね


映画は終始シリアスな雰囲気
カチャーシーのシーンも少し出てきたけどやはり全体は重いですよね

ただ映画の方が残酷な部分の表現はマイルド
小説では小学校の図書館にあった「はだしのゲン」の漫画を文章にしたような生々しい描写も出てくるので・・あれは映像ではきつすぎる
やはり多くの人が観られるような配慮が感じられます


文章でしか表現できないもの
映像でしか表現できないもの
それぞれの良さがあってどちらもいいですね

映画宝島でちょっとわかりにくかった&補足したい箇所

小説映画それぞれの良さがある!合わせなくていい!と言った私ですが・・
ちょっとだけ映画の補足的なものをしてみます

オンを連れ去った集団は?空撃はなぜ?

悪石島のエピソード
オンは基地の中で謎の日本人集団に捕まったと思ったら労働をさせれられている・・
そして戦後なのに空撃?と、映画だけだとちょっと分かりにくかったですね

オンを捕らえたのは与那国島の密貿易団
悪石島を中継地点とし武器以外に人身売買も行っているようなグループで、オンはウタを守るため島で労働をさせられていた、と
空撃はアメリカによる密貿易団の摘発のための攻撃だったわけです

ちなみにこの悪石島へ渡った時オンは舌を切断されていたので言葉を話せなくなっていた
ヤマコと会った幼児期のウタの言葉がたどたどしかったのはそんな理由があったんですね

ガマでのグスクのあの怯え方はなんだったのか?

刑事になったグスクが殺人事件の捜査でガマに入るシーン
人骨を見ただけで我を忘れるほど怯えるグスク・・
知らない人が見たら刑事なのにヘタレ過ぎないか?となりそうなここ、史実を知っていたり小説を読んでいたら印象が違うはず

グスクはじめオン、レイ、ヤマコも沖縄戦争の生き残りなわけです
民間人の4人に1人が亡くなった戦争・・
全員14歳未満で戦力にも野戦病院の看護にも招集されなかった、でも記憶はばっちりある年齢、そんな戦争体験者・戦争孤児たちなんです

ガマの中で何があったのか・・小説でも触れているので読んでほしいな
ここには書けないわ
知ったら「グスクよくガマの中に入れたな」となるよね

飛行機墜落事故のヤマコの心境

そして飛行機墜落事故ね
このシーン小説はかなりキツいです

この事故でヤマコは目の前で3人の教え子を亡くしているんです
これこそ「はだしのゲン文章版」の表現で小説では描かれている

あまりの惨劇と言える光景にショックを受けると共に子どもを守れなかった深い自責の念にかられるヤマコ

しかもそれだけじゃなくこの時にヤマコは気づいちゃうんです
あの悲惨な戦争時、ヤマコの手をひいて助けてくれた島の英雄は今回の大惨事の際には現れなかった

どこかで生きていて帰ってきてくれるんじゃないかと信じた恋人はもういないってことを思い知った・・というすごく悲しいシーンなんです

著者は沖縄の人と思ったら

宝島の作者の真藤順丈さん、疑いもなく沖縄出身の方と思い読み進めていましたが・・
たまたまネットニュースで真藤さんのインタビューを見かけ東京出身で沖縄にルーツはないとの事実を知りました
これ本当びっくりした!

小説は全て方言で書かれているし亜熱帯地方特有の天候の表現だったり、現地をよく知る人の言葉・文章ですよね

それから第二部の冒頭で沖縄の人のおおらかさや懐の深さ順応性、それらがどうやって培われてきたものなのか語られているんだけど、ここ私は心から共感した・・首がもげるほど共感した
沖縄の人と一括りにはできないものだけど、やっぱり土地ならではの県民性みたいなのってあるよね

そしてひとつだけ引用させてもらいたい
コザ暴動の日の中心地である胡屋交差点を真藤さんは小説の中でこう表現しているんです

われら語り部が神かけて断言しよう、震源地となった交差点はあたかも垂直方向のオボツカグラと水平方向のニライカナイが交わるところ
この島がつむいできた壮烈な歴史の、めくるめくウチナーの叙事詩の到達点といってまちがいなかった

宝島 真藤順丈


こんな文章を書ける人がいるのか!?しかも沖縄の人以外で!
私鳥肌立ちました・・
相当量の取材や下調べをされただろうし、想像力豊かなのはもちろん他者への共感力に満ちた方なんだろうと思いました


沖縄の裏社会的存在のはじまりのお話
好きなもののことなら知りたくなるじゃない

私は沖縄大好きなんです
そこにある自然も人も
個人的好みの話ですけど、私あまり不良とかアウトローみたいな雰囲気は好まないんですよ
ルーキーズなら御子柴くんが好きだしあんなにかっこいいと思うスラムダンクも不良要素は好きじゃない
ちょっと悪いのがかっこいい、みたいなの共感できないんだよな
この宝島はそんなのたくさん出てきますね

なので苦手なシーンもあったね
でも宝島を読まなかったら沖縄独自の暴力団の成り立ちとか知ることはなかったし、戦果アギヤーとか貿易団も単純に英雄のイメージのみの浅い知識のままだったろうな

裏社会的な存在もこの歴史あってこそ、なんだよね

好きなもののおかげでまたひとつ私の知識は増えたのでありました!感謝です!

小説宝島のラストシーンは号泣
読む人にパワーを与える力強いメッセージ!

読むのがしんどい部分もあった
何度か本を閉じて心を休めたこともあった
でもラストは感動!号泣した!

お話の最後はある人物がある人物に向けた手紙が登場するんですが・・
この手紙の内容がめちゃくちゃいい!!
あまりに良すぎて本当に読んで良かったと思うと同時に作品の存在に感謝もしました

そして読了後はものすごく前向きになれる、読んだ人にパワーを与える・・
そんな小説の力を感じましたね

私もがんばって生きて・・また沖縄に行こうっと!
読んでみて~おすすめです!

小説はの文庫版は上下二冊で完結
上に第一部&第二部、下に第三部
・・一気読みがおすすめ!!

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