映画

【映画の感想】おーい、応為で芸術家の暮らしぶりを観る

おーい、応為を観てきた!ちょっと前だけど!

深夜に暗い部屋でひとりでぼーっと観ていたいような・・
いぶし銀的な魅力を持つ映画でした!
邦画って・・いいね!

これはどこまで実話??と思いつつの鑑賞で、後ほど調べたところ時代が古いだけに「説がある」の文字が多々出てくるんですよね~

ってことでその「説」も交えつつ感想など書いてきまーす!
ネタバレって感じの作風ではないけど、多少内容には触れていますので知りたくない方はご注意ください!

おーい、応為詳細


映画「おーい、応為」の原作は飯島虚心「葛飾北斎伝」と杉浦日向子さんの「百日紅」の中の「木瓜」「野分」です


「葛飾北斎伝」
著者飯島虚心(1841-1901)が北斎本人を知る人物から聞いた話や北斎自身の書簡を元に書かれた伝記です
残されている情報が少ない時代の貴重な文献ですね




「百日紅」
杉浦日向子さんの代表作です
江戸や明治の時代漫画を得意とする漫画家さん
当時の人々の生活ぶりが生き生きと描かれています

あらすじ


葛飾北斎の娘「お栄」
男勝りの任侠風な性格で画家の夫・南沢等明の絵をあざ笑い離縁、北斎の住む家へ出戻ることになる
芸術家の似た者同士の父娘はともに絵を描き暮らすことになる・・

キャスト


葛飾応為・・長澤まさみ
葛飾北斎・・永瀬正敏
渓斎英泉(善次郎)・・髙橋海斗
魚屋北渓(初五郎)・・大谷亮平
元吉・・篠井英介
津軽の侍・・奥野瑛太
こと・・寺島しのぶ

葛飾北斎とその家族の有力説


葛飾北斎は二度結婚をしていて、それぞれの妻との間に子供が3人ずつ(どちらも一男二女)いたとされています
応為(お栄)は後妻(名は”こと”)との娘で三女でありこの作品でも出てきた下の妹は体が弱く早くに亡くなった、というのも史実通りのようです

二人の妻や応為以外の子どもたちについての情報はあまり残っていないようですが、応為が離縁後に出戻っていたのは史実通りであり、北斎の春画の彩色を担当していたという説や「葛飾辰女」は応為の前の画号で同一人物と考えられていることから、やはり同じ画家であった応為が家族の中ではいちばん北斎に近い存在だったであろう、と考えられますね

感想・好きなシーン


おーい、応為の感想や好きなシーンを語ります

描かれるのはふたりの芸術家の暮らしぶり

家族の数だけそれぞれの形あり!
このおーい、応為は葛飾北斎という江戸時代の超有名人の家族の形、その日常を見る映画になっています

何か一つの大きなストーリーがあるわけではなく、ひとつの家族の長い年月を描いた時代劇ホームドラマって感じですね
ただホームドラマと言っても背景の音楽がジャズだったり、抑えられた色調もあってどこか渋くかっこいい雰囲気が漂っています

んで父娘ふたりとも態度も口も悪いのね!
父のこと「鉄蔵」って呼んでるし!
そしてふたりとも芸術家でって・・そりゃもめるわw

でもこの父娘はお互いの才能を理解しているのはもちろん、それぞれの描く絵が好きなんだろうなってところはすごく伝わってくる

このバランスをもって暮らしている家族なわけですね

「邦画の俳優」って言ったらこの人の名をあげる

葛飾北斎を演じた永瀬正敏さん
昔から渋いけど今も渋いですね~
見た目はもちろん変化しているんだけど、若い頃とはまた別の渋さを纏っていらっしゃる

私が永瀬さんを初めて見たのは高校生の頃(25年以上前)何かの映画・・エキセントリックなヤツだったな・・だったんですけど、その当時も
「この人渋いな~、味がある役者さんってこんな人のことだよね」
と思ったんです

で、今回も全く同じこと思った!
私の中で「邦画界にこの人あり」みたいな、邦画が似合う役者さんのイメージそのままの俳優さんなんですよね

これからも引き続きその渋さを楽しませてもらおうと思います!

赤で応為の女性性がさりげなく描かれる

「女は赤いものを身につけると優しくなれるものだよ」

おーい、応為より


母ことからの言葉を受け取る応為
密かに想いを寄せる初五郎に失恋していたり善次郎とちょっとそんな雰囲気になりそうだったり・・
画家&娘以外、応為の女性である部分も描かれているのが印象的でした

応為が買った赤い金魚、応為が描く女性の赤い着物の袖・・
全体的に抑えめの色調の中でポイントになっている赤い色は応為の女性性をさりげなく表しているんでしょうね
北斎だけだったらこうはならないもんな~

私的好きなシーンその①不器用な父、娘に画号を与える

おーい、応為で好きだったシーンを語る!

まずは画号のところ
なんだかんだ言っても応為は画家としての父を尊敬しているし、北斎も娘の絵を認めている、お互い尊重し合っている感じが表現されていていいシーンだなって思いました

北斎が(おそらくとっても珍しく)今日はちょっといいお店のご飯にしようと応為に提案→そんな金ない!と一蹴される→隠し持っていたお金があるんですーとなる

このお金はこんな時のために娘のために大切にとっておいたんでしょうね
不器用な父・北斎が微笑ましかったです
応為もあからさまに出そうとしない隠そうとしつつも嬉しさがこぼれている感じがいいんだよね~

私的好きなシーンその②応為、侍を追い返す

絵の依頼ため津軽の侍が北斎を訪ねるシーン
刀を抜いた侍に対し、侍の刀と画家の筆は同等だと言い結果誰も血を流さず北斎の希望を通した、という・・
応為の見せ場って感じのシーンでした
こんな人いたら街の人気者間違いないね

長澤まさみさんはこんなのめちゃくちゃ似合うよね!
かっこいい!!

私的好きなシーンその③妹想いの応為!!

応為にはお猶という体の弱い幼い妹がおり、母とともに離れたところに暮らしている
応為は妹を気にかけたまに訪ねている風でしたね

夜布団に横になった時の「蚊帳の上に何かいる」というシーン
ひたすら優しい対応をする応為が印象的でした
煙管くわえて「鉄蔵!」って言ってるのとは別人に見える・・

実際に応為は家庭教師として訪問型でお嬢さん方に絵を教えていたということなので、もしかしたらけっこう子ども好き?本業は子どもに絵を教えるとかそちらなんじゃないか?とか勝手に思ったりして・・
残っている作品数もとても少ないうえ手作りの豆人形を売って小銭稼ぎもしていたそうだし・・
筆を持ってひたすら絵に向きあっていた北斎に対し応為は父のサポート&自分の絵を描きつつも他のことに楽しみを見出したりして生活していたんじゃないかなー

・・とこんな感じで正確な史実が不明だといろんな想像を膨らませることができますね

葛飾応為の代表作「吉原格子之図」


作中も登場してました葛飾応為の代表作「吉原格子乃図」
明暗のコントラストが印象的な作品ですね

葛飾応為「吉原格子之図」
画像元 wikipedia(パブリックドメイン)


絵画鑑賞を趣味とする者として、その絵がどんな状況や背景で描かれたのか・・
想像したり誰かの解釈を聞いたりするのはとても楽しい!
なのでこの吉原の遊女を応為が眺めるシーンは私はドキドキワクワクでした!

そうだよな、応為は格子の外のさらに後ろの方からこの光景を見ていたんだよね

この「吉原格子之図」は太田記念美術館が所蔵しています
常設ではないのでご注意を!
もう一つの代表作である「夜桜美人図」はメナード美術館、
作中登場した「百合図」は長野県の旧家が所蔵元となっています

葛飾応為の作品はなかなかすぐに実物を見られるわけではないんですね
次に応為の展覧会があったら必ず行くぞ・・!!


※「夜桜美人図」は2026年1月7日~2月15日にメナード美術館にて展示予定です
行かなきゃ~!